令和3年産米に向け「今できることに全力投球」/全農・高尾雅之常務インタビュー〈1〉


全農 米麦農産事業担当常務理事・高尾雅之常務

全農 米麦農産事業担当常務理事・高尾雅之常務

終息の兆しが見えないCOVID-19(新型コロナウィルス肺炎)は米業界にも大きな打撃を与え、令和3年産は過去最大の非主食用米への転換を余儀なくされている。作付を目前にして、本紙では全農の高尾雅之米麦農産事業担当常務理事に4月14日にインタビューした。

――令和2年産の契約・販売状況は。

販売計画214万tに対し、3月末現在の速報値で契約数量は前年同期比87%の153万t、販売実績は前年同期比87%の70万tまで積み上がった。COVID-19の流行と、卸が保有している令和元年産がちょうど重なり、消化に苦しんでいたところに令和2年産が出てきたため、これらの影響を受けて低調に推移している。

もともと古米としての固定需要は一定の量があり、その分は翌米穀年度に計画的に持ち越している実態がある。平成30年産と令和元年産の10月末の持越数量を比較すると10万tほど多かった。現在、令和元年産は使い切るまであと4万tというところまで来ており、GWくらいには潮目が変わるだろう。いよいよ令和2年産の契約が動き始め、前年同期比87%という数字も徐々に回復してくるのではないか。

――令和3年産の需給見通しをどう見ていますか。

国の最新の需給見通しは令和4年6月末の民間在庫を「195万~200万t」と仮置きして、令和3年産の生産量を「693万t」としている。一方、3月30日の自民党会合で全中は、各県の目安を積み上げた令和3年産生産量を「709万t」と試算した上で、令和4年6月末の民間在庫を「220万~253万t」としている。COVID-19の影響と、もともと供給が過剰基調で推移していたことを考えると、全中の試算のほうがより現実的ではないかと思う。

――作付拡大の動きに対し、常務は一昨年のインタビューで「ダムに目に見えないヒビが入っているようなもの」、昨年は「ダムに穴がボコボコ開いている状態」と表現されました。今年はいかがでしょうか。

「ヒビや穴ができている。しかもダムの水は満タンで溢れ出す寸前の状況」ではないかと見ている。このままだと決壊してしまうため、国も再生協議会もJAグループも懸命に食い止めようとしている。目下のCOVID-19禍による「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」のように、計画生産の必要性を訴えるアナウンスが現場に浸透してきており「おちおちしていられない」という状況だ。

今後は6月末の営農計画書の提出期限に向けて飼料用米への転換を強力に推進していく。国の転作支援メニューが増えたことによって主食用と遜色ない手取りを確保できることになり、早急な転換が進みつつある。ただ、実際に各地が取り組んだ成果は6月末の締切後にならないとわからない。

――COVID-19禍を抜きにしても令和2年産は過剰だったと思いますか。

やはり、COVID-19禍が現在の需給緩和の主な原因だと思う。令和2年産の作柄は「西低東高」で、全国の作況指数は「99」だった。全体的に見ると「西日本は足りない、東日本は潤沢」という地域のコントラストがはっきり出たと思う。いずれにしても過剰基調なことに変わりはないため、20万tの長期計画販売を既に決定している。ただこれでは間に合わないことも想定し対策を検討する必要がある。

――令和3年産に向けて国は水田リノベーション事業を打ち出しました。

水田リノベーション事業については与党や農林水産省の努力に感謝している。一方で、産地から多くの要望があがっており、今後、対応を検討いただきたいと考えている。ただ、品目別に見ると加工用米は採択率が68%と低く、その分が飼料用米に流れるのか、主食用に流れるのかは6月末の営農計画書を注視していかなければならない。どんな取組にせよ、漁師が網を引き揚げてみなければ何が釣れたかわからないが如く営農計画書の内容を見ない何とも申し上げられる段階ではない。

――また、生産者団体などによる補助金の代理受領・共同(プール)計算ができるようになりました。

これは今までにない取組なため、積極的に取り組む現場はわずかだ。これから増やすための取組を進めなければいけない。共同計算して生産者手取りの平準化を目指すことについても、主食用は食料品なため消費税が8%だが、飼料用にすると10%になるなど微妙な違いが出てくる。

また、手取り額に占める交付金の割合も飼料用米・加工用米などで異なってくる。これらの様々な課題をクリアしなければいけないことがわかってきた。ただこの状況下なので、できるだけリモート会議などを活用しながら、JAが判断できるよう現場に働きかけていきたい。

――事前契約はいかがでしょう。

この状況なので積み上がっていない。令和2年産がこれだけ残っているなかにあって、取引先としては3年産以降の事前契約に気持ちが切り替わらないのだろう。いずれにせよ、令和3年産で主食用から非主食用に転換できたというエビデンスがしっかりあれば、実需も「需給が締まる」となって、安定した取引に繋がっていくはずだ。先ほど話した水田リノベーション事業や代理受領を活用して今できることに全力投球し、6月末の結果を見て更なる対策が必要になれば国と相談してすすめていく。

――そもそも「国が関与していた頃に戻すべき」という意見もありますが、どのようにお考えでしょうか。

今の政策を見ていて日頃から感じているのは「主食用から別のものに転換する場合、あるべき価格水準をどこに置くべきか」という点だ。例えば東北は主食用をメインに、西は畜産が盛んなため飼料用やWCSをメインに転換するなど、将来的なビジョンを地域毎に明確にしていく方向感ではないか。あるべき価格水準をふまえつつ、1度レビュー(見直し)をして再検証してみるべきなのではないかと感じる。

いま目指している「需要に応じた生産」は、事前契約で主食用の量をほとんど固めたうえで、加工用などの需要量を調査し、産地ごとにシェアを割り振っていくというのが、理想的な仕組みだ。

〈米麦日報2021年4月22日付〉

記事提供元:https://www.ssnp.co.jp/news/rice/2021/04/2021-0422-1609-14.html
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