テーブルストック「おいしさにこだわった保存食」レトルトで“茹でたて”麺発売、ボロネーゼ・ナポリタン・カレーうどん・ほうとう/中村社長インタビュー


テーブルストック「おいしさにこだわった保存食(ボロネーゼ、ほうとう)」(調理例)

テーブルストック「おいしさにこだわった保存食(ボロネーゼ、ほうとう)」(調理例)

テーブルストック(株)(山梨県甲州市、中村桂社長=(株)信玄食品社長)は4月14日、「おいしさにこだわった保存食」シリーズを発売した。ボロネーゼ、ナポリタン、カレーうどん、ほうとうの4アイテム。各648円(税込)。レトルトパウチに麺・スープ(つゆ)・具材が入っており、湯煎3分で食べられる。常温で5年保存可能。

最大の特徴は独自製法により麺の水分値をコントロールし、湯煎後に「茹でたて」に近い食感を実現したことだ。ローリングストックとしての備蓄や災害時の利用だけでなく、アウトドアでの利用も見込む。今回、本紙では中村社長に製品の開発背景や技術的特徴を聞いた。

テーブルストック 中村社長

テーブルストック 中村社長

――テーブルストックとして別会社を立てられましたが、中村社長は煮貝メーカーである信玄食品の社長です。今回、麺の事業に参入されたきっかけは。

信玄食品には約60年の歴史があり、主にアワビの加工をしてきました。創業当時は生きたまま冷凍したオーストラリア・タスマニア産のアワビを仕入れ、これをレトルト加工で貝柱まで柔らかくする技術を磨いてきました。約60年間にわたってアワビをレトルト加工する中で、熱、時間、食材の褐変など様々なデータを取ってきました。

また、煮貝はお歳暮・お中元と正月のおせちでの利用がほとんどです。そのため、10〜12月が繁忙期になり、1〜9月は機械も職人も仕事が少なくなってしまいます。蓄積してきた技術を他の食材に活かせないか、10年ほど前から研究を始めました。

きっかけの一つに、ある素麺メーカーからの相談がありました。素麺も夏場は食べられるが、冬場は食べられないという季節商品です。「もっと手軽に、別の形で素麺を食べられないか」。そう言われたので、まずは試してみました。当然、レトルトパウチに素麺とつゆが入っていては麺がグチャグチャになってしまいます。ただ、ここで麺にあれこれ工夫をするのではなく、スープを工夫することで実現できないかと考えました。スープにでんぷん質を加えて、麺への水分移動を抑えるという手法です。

――レトルトパウチの中に水分があるのに、麺が伸びないと。

そうなんです。米飯やもちの開発もしたのですが、最初に成功したのはもちです。JALのファーストクラスにぜんざいが採用されたときは、社員と小躍りして喜びましたよ。ぜんざいの汁にでんぷん質を加え、もちに水分が浸透しないようにコントロールします。そして、加熱時にもちに熱と水分が入るという商品を完成させました。

麺でもこの技術が利用できます。今回の4商品の麺は、マンナンを入れたり、こんにゃくを配合したりといったことはしていません。ごくごく普通の生麺です。この生麺を茹でてから「冷やしこみ」という工程を行います。半生というか、固めのアルデンテの状態にします。こうすると常温では麺の外側から中心に水分が中心に浸透しません。そして、スープにはでんぷん質を加えます。麺とスープがレトルトパウチの中に入っていても、温めるまで中の麺の水分値を一定に保つことが可能になりました。湯煎で温めることにより、スープが緩くなり、麺も温まります。そして、麺の中心に水分が移動し始めるのです。これによって、いわば「茹でたて」の麺を食べることができます。

先日、山梨県の長崎幸太郎知事へ表敬訪問に伺い、試食していただいたのですが、「こんなにおいしいなら他の都府県で災害があった時に、これまでは義援金を送ることしかできなかったが、このレトルト麺を災害食として進呈したい」との言葉もいただきました。

また、今回の商品のうどんの製法特許は取得済み、パスタも出願済みで、夏には取得できる見込みです。

――しかし、レトルトの麺が「茹でたて」に、にわかには信じられない話です。

そうだと思います。この10年、米飯やもちや麺の「おいしいレトルト」を作るため、研究に明け暮れた社員がいます。私からしてみればノーベル賞ものの発明です。最初に、「レトルトのおいしい麺を作るぞ」と言った時は、「この人何を言っているんだろう」と、言われた方は思ったでしょうね(笑)。様々な要素がありますが、乳化と老化というポイントを突き詰めていった結果、驚きの商品が生まれました。

――そのほか、開発で難しかったのは。

より、おいしさを求めるため、スープに加えるでんぷん質の量の調整があります。でんぷん質が多ければ常温で状態を安定させやすくなります。しかし、多すぎれば温めた時にとろみが強くなってしまいます。とろみのあるボロネーゼというわけにはいきませんから。麺に水分が移行しないぎりぎりの量を見極める必要があります。ここでも、開発担当者にはがんばってもらいました。

――保存食として発売したのは何故でしょう。

10年前に東日本大震災が発生しました。別法人で「板前寿司」の名前ですし店の経営もしているのですが、しばらくはお客さんが来なくなり、板前さんも包丁を研ぐしか仕事がなくなってしまいました。その時、「できることをやろう」と思って、気仙沼の小学校にマグロを持って行って食べてもらいました。1月5日の初競りで落としたマグロのお寿司と、温かい海老の味噌汁を食べてもらったのですが、おいしいものを食べた時の皆さんの顔が忘れられません。食品企業に携わるものとしての生きる意味を教えていただきました。防災食はどうしてもその機能から、おいしさの優先順位が2番手、3番手になることがあります。しかし、私は気仙沼の経験から、どうしても「おいしい」防災食でなければいけないと思いました。それが原点にあります。

別会社としてテーブルストックを立てたのも、会社としての目標を分かりやすくしたいう目的がありました。

――湯煎で3分という温め時間ですが、それ以上だと麺は伸びますか。

5分でも10分でも伸びません。実際の災害現場では1袋ずつ3分なんて正確にはできません。そこも考えた上で商品設計しました。

テーブルストック「おいしさにこだわった保存食」(ボロネーゼ、ほうとう)

テーブルストック「おいしさにこだわった保存食」(ボロネーゼ、ほうとう)

――今後の展開について。

実は、既にレンジ対応のパウチ入り商品が出来上がっています。缶詰への応用や、常温のまま食べられるレトルトパウチ製品にも取り組んでいます。今回は「おいしさにこだわった保存食」として発売しましたが、この技術が活かせる製品はまだまだあると思っています。

〈米麦日報2021年4月14日付〉

記事提供元:https://www.ssnp.co.jp/news/rice/2021/04/2021-0414-1057-16.html
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