イートアンドホールディングス 冷食にスーパーの商習慣などはハードルか〈仲田社長インタビュー・外食の冷凍への取り組みは〉


イートアンドホールディングス 仲田社長

イートアンドホールディングス 仲田社長

冷凍食品を販売する外食企業が増えている。その中で、イートアンドは1993年に冷凍餃子の販売を生協で開始するなど、外食と食品事業の両立を、いち早く実現している。その目には、今の取り組みがどのように見えているのか。ダイエーでの就業経験もある、仲田浩康社長に聞いた。

――当時、外食企業だったイートアンドがなぜ冷凍餃子の販売に至ったのでしょうか。

まず、当社の今の売り上げ構成は、食品6割、外食4割となっています。

外食企業の冷凍食品販売は、吉野家さんの方が早く生協でスタートされ、我々はその少し後(1993年)に販売を始めました。しばらくは生協だけでした。なぜかというと、FC店舗もあり、外食とカニバリになる不安もあって、量販店向けの提案に踏ん切りがつかなかった。むしろ、量販店に行くという選択肢はなく、通販や生協といったクローズドマーケットでチャレンジしてみようと取り組みました。

外食以外の主力事業に育てるための一つのやり方としてチャレンジすることと、外食だけの知名度でなく、生協での知名度を上げようという目的がありました。1993年当時は我々も全国的なブランドでもなかったため、挑戦でした。

まず初めに行ったのは「コープこうべ」での販売です。大阪王将という名前で商品を生み出し、特長の一つとも言える、味の決め手となる革新の調味料は店と共通にして発売し、売れた。そこから全国に拡げ、2001年にスーパーでの販売を開始しました。

ただ、8年かけて育てた、というよりも8年かけてもそこまで広がりませんでした。生協だけの限られた市場では、当時はそこまで広がらなかった。我々の努力も足りなかったのかもしれない。その後、スーパーに販路を拡げようと東京で営業を行い、多くのところで売っていただけるようになりました。

――外食企業で冷凍食品に力を入れている企業が増えています。どう感じていますか。

外食の場合、全国区なのかは別として、前提条件としては基本的に知名度が必要だと思うんですね。また、スーパーという値ごろ感のある価格帯に合った商品を作るのは至難です。我々で販売している餃子の場合、今は水も油もフタもいらない、タレも付いている。しかし、当時売ったのは水も油も必要で、タレも付いていない。それなのに今の餃子は、技術の進歩によって当時の7割程度の原価に抑えられています。

また、スーパーの商習慣も難しい。どんな会社もリベートの掛け率、店着の何掛けで納品する、などを考えており、今もこうした商習慣は残っています。それを知らない方や企業が参入するのはハードルが高いと思うんです。

――それはどうしてですか。

商品は末端売価の逆算で作らなければなりません。かかった原価の上乗せで売価が決まる。そういう形で商品開発をしていないと、消費者の求める売価感とはかけ離れる。

外食ブランドの商品は一般的に我々の思う売価帯よりもちょっと高い。我々は冷凍餃子を198円で売っており、2人でも十分に食べられる。しかし、1人前で300円400円かかると、3人で1000円を超えてしまいます。商品を200円で食べれるという熾烈な売価の競争です。

価格ではなく価値という意見もありますが、スーパーは1品当たり200円のものを10品買うという利用者の習性があります。だいたい1回の買い物で2200円でしょうか。そこに400円のものを3品買うと、他の買うはずだった物が買えなくなります。こうした購買の動きからかけ離れたものは、非常に厳しい。マッチするスーパーや量販店は高級スーパーなど極めて限られます。

意識的に単価を上げる取り組みをしているところもあるが、大方はそうではない。東京の都心だけ見ると高単価でも売れそうに思えるが、世の中のスーパーは20,000店以上あって、多くは普通のスーパー。そのため、1品200円の物を11から12品買ってもらうという取り組みになる。こういう行動様式や予算は、やはり今も昔もそうそう変わってなくて、そこにマッチする物を投入しなければやはり難しい。

スーパーでの購買は、週に行く日数も決まっている。購買行動に合った価格を無視し、原価を積み上げて売価を上げると、生き残るのは難しいと考えられます。

例えば、外食の店で700円のメニューをそのままスーパーに持っていっても無理だと思います。価格も少しでなく相当変えないと厳しい。うちの商品だとスーパーは12粒で200円、店舗だと6粒が250円ほどで販売されています。

それでも経営者の中ではブランドのカニバリやブランド棄損との戦いがあると思う。店と全く同じものを同じ価格にして量販店で売っても、簡単には売れるものではないと思います。

――冷凍食品参入の難しさを、改めてお聞かせください

冷凍食品メーカー各社ともお金をかけて冷凍ラインを作っている。我々の冷凍フリーザーも日本で最も高性能のフリーザーを使っており、関東工場だけでこれまで100億円以上を投資している。販路も含め、大きな取り組みとして外食がやるにはハードルも高く、難しいと思います。

――EC(通販)サイトだといかがでしょうか。

ECサイトはたまに食べるもので、スーパーとは異なり、週に2,3日買うのでは無く、ECサイトは月に数回使えばというところで、自宅に送ってもらえる。冷凍食品を運ぶのに運賃は800〜1,000円かかっている。それを上乗せすると値段は高くなる。ある程度までは広がると思うけど、スーパーや生協で販売している何十兆円の世界ではなく、何千億というところすら難しいと思う。

ECだと広がっているように感じられますが、一般の小売の何十兆円という規模と比べるとまだ天と地ほど大きさの差がある。ECは1社で1兆円を売り上げているようなところはなく、全国のECを組み合わせてもスーパー1社の売上にもなっていません。やはり非常に歴史ある食品メーカーの中に入っていくというのは、至難の業です。我々はたまたま奇跡のようなことが起こっているだけです。

冷凍食品のコンシューマー売上を見ると、味の素、ニチレイ、ニッスイ、マルハニチロなどが並ぶ中、イートアンドは第9位です。何千億円を売り上げる会社の中に、我々のような数百億円の会社が入っているんですよ。あとは何千億。それぐらい入れない市場で、大きな会社は長い歴史をかけて、冷凍食品の技術や売価政策、流通対策をすべてされている。簡単に入れるはずもないですし、20年やって何とか第9位です。上位との差はあまりにも大きい。

冷凍食品市場に参入しようとM&Aを検討されていたとしても、売場に並んでいる会社で最もミニマムなのが我々。しかも突出して。やはり難しいですよ。家庭用のECならばある程度はできるかもしれませんが、ある程度以上を目指すならばお金と経験値がいるでしょうし。

――そういった意味ではECの方が可能性は高いのでしょうか。

それはまた違うかもしれません。ECで購入する場合、値段が少し高くても近くに店がないから買ってみようという動機がまずある。例えば東京の有名店を九州に住む人が買えるなどの動機です。一定程度のニーズはあると思います。

ただ、スーパーの場合だと中価格帯は売場にまず並ばない。限られたスーパーでも難しいと思います。スーパーの商売はシビアで、10円20円の売価にも敏感です。198円で売るのと、208円で売るのでは売れ数が全く変わる。それが50円100円高くなるのでは、非常に厳しい世界です。

この中で売上を20億30億円にするのは至難の業だと思います。年数もかかるし、商習慣も理解しなくてはならない。それに消費者の購入する売価帯、スーパーの売りたい売価帯、スーパーが仕入れたい価格というのがあるので、そこに合致していかないと。こういうのをやってくれている都心スーパーならばあるかもしれないが、難しいかもしれませんね。

冷凍食品はコンシューマー市場より業務用の方が市場規模は大きい。自分のブランドを使わず、業務用として提案をするのは一つの手段かもしれませんが、それはあまり意味がないかもしれませんね。

こうして話しているけど、どれだけ自信あるんだよと思われてしまうかもしれませんが(笑)。

〈冷食日報2021年4月8日付〉

記事提供元:https://www.ssnp.co.jp/news/frozen/2021/04/2021-0408-1644-16.html
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