「静岡県産豚肉流通促進対策講習会」開催、TOKYO Xの事例を学ぶ/静岡県畜産振興課


ミートコンパニオン 植村取締役

ミートコンパニオン 植村取締役

豚肉のブランド化を推進するには、おいしいことが第一条件

静岡県畜産振興課は3月24日、静岡市葵区のレイアップ御幸町ビルで「静岡県産豚肉流通促進対策講習会」を開いた。当日は、豚肉の流通促進とブランディング化について、TOKYO X-Association元会長の植村光一郎氏(ミートコンパニオン常務取締役)が登壇し、TOKYO Xの誕生から現在に至るまでブランド化に向けた様々な取り組みを説明し、国産豚肉のブランド力強化のための重要なポイントを紹介した。

当日は食肉流通関係事業者や県内の養豚生産者ら約30人が受講したが、新型コロナウイルス感染症や豚熱(CSF)のまん延防止の観点から、YouTubeによるライブ配信で行われた。

講演で植村氏は、TOKYO Xの生産が開始された1997年当時ついて、拓殖銀行の営業停止や山一證券が自主廃業するなど日本経済が混乱していたことに触れ、「一番悪い状況で生産・販売が始まった。そのことが悪いことかというと、生産者と流通事業者が危機感を持っていたからこそ、TOKYO Xの理念をきちんと守ってきたと思う」と回顧した。また、TOKYO Xの生産では、4つの理念(Safety、Biotic、Animalwelfare、Quality)のもと、飼養管理マニュアル、指定飼料を統一し、出荷農家が一堂に会す肉質検討会では、第5〜6肋骨の間でロースを切開し、ロースの断面で脂肪交雑、肉色、肉のきめと締まり、脂肪の質について審査を行っていることも紹介した。

2001年には東京都民においしい豚肉を供給することを目的に、従来の東京都内の生産者だけでなく、都外の生産者も加えた「TOKYO X連絡会議」が設立され、当時は富士宮市の生産者もTOKYO Xの生産に携わっていたことを紹介した。2002年には「第1回お客様アンケート」を実施し、TOKYO Xの理念が消費者に伝わっているのか、どんな豚肉を求めているのかを調査したという。そのアンケートのなかでTOKYO Xを気に入っている点として「おいしい」との回答が多数を占めたことから、「いくらブランド豚で理念や生産工程が良くても、やはりおいしいことがベースにないとブランディングはなかなかできないのではないか。まずはおいしいこと、そのうえで理論づけや消費者が知りたい情報を伝えることがブランディングには必要といえる」と強調した。

2007年には飼料価格コストが上昇する半面、デフレ経済でスーパーなどでの販売価格が安値に推移するなど、生産原価と販売価格がかい離していた事態を受けてTOYKOXの価格改定に踏み切ったことを紹介した。「TOKYO Xには流通協議会(TOKYO X-Association)があるため、(流通サイドも)生産原価がきちんと分かっていた。生産農家が疲弊する前に値上げをしようと、臨時総会で値上げの交渉をし、販売店側の理解を得て約7%の値上げをすることができた」「なぜ、それを行ったのか。需給関係で値段が付かずに原価だけ上昇していくと生産農家が衰退して、TOKYO Xの生産量が低下してしまう。落ちた状態で初めて高い販売価格が付いたのでは、すでにもうTOKYO Xの生産はないことになる。生産者が疲弊して生産量が減るのであれば、その前に値上げをして農家を守ろうとした」と振り返った。

このほか、TOKYO Xのプランド戦略として、第1次銘柄化戦略では高級な百貨店、精肉専門店、レストランでのテスト販売を行い、おいしさを認識してもらったこと、第2次銘柄化戦略では、おいしさのわけを説いたこと、第3次銘柄化では生産工程の優位性を説くこと、第4次銘柄化戦略では、食育を通して消費者の購買活動がいかに生産現場に活性化をもたらすかを説いていると説明した。

質疑で植村氏は、今後のTOKYO Xのプランド戦略について問われ、「ブランドで最も大切なことは地域で愛されること、その地域の方が誇りを持ってその商品を人に勧め、食べてもらうようになること。それがTOKYO Xの次の課題だと思っている。松阪牛や米沢牛の場合、地元の駅を降りるとそれらを提供する多くの飲食店がある。TOKYO Xの場合、東京駅で降りても『どこで食べることができるのか』といった声が寄せられる。もっと東京都民に愛され、都民の方に、東京にはTOKYO Xというおいしい豚肉があると、誇りを持って語ることができるような環境をつくることができればと思う」と語った。

静岡は豚肉消費県、県産ブランド力の強化を

当日は、静岡県畜産振興課CSF対策室の吉田慎室長があいさつし、「静岡県の2019年度の養豚の算出額は72億円で、前年度の61億円から15%ほど増加している。この増加は、肥育豚の頭数が増えたことと豚肉の単価が良かったことだが、県内の養豚農場の規模も拡大している」と説明。さらに、「豚肉の消費について、総務省の家計調査によると、豚肉の購入量は静岡市が全国で7番目、浜松市が12番目と上位にランクされている。

一方、牛肉と鶏肉はいずれも40番目以降となり、本県は豚肉の消費県と考える。流通については、過去に行った県内のスーパーと食肉事業者へのアンケート調査の結果、県産の食肉の取扱いを増やしていきたいという意向を持つ食肉事業者が多いことが分かっている。このような状況にある静岡県で、今後、県産豚をどのようにブランド力を強化して流通販売を強化していくか、TOKYO Xをトップブランドに育て上げた植村氏にヒントを頂きたく、今回の講習会を開くことにした」と述べた。

このほか、セミナーでは、静岡県畜産振興課家畜衛生班の秋山利恵主任から、アフリカ豚熱(ASF)について、疾病の概要や海外の発生状況、国内の侵入リスク、予防対策のポイントなどが紹介された。

〈畜産日報2021年3月29日付〉

記事提供元:https://www.ssnp.co.jp/news/meat/2021/03/2021-0329-1429-16.html
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