大阪堂島商品取引所 新潟市内でコメ先物取引セミナー開催「使う使わないは各人の判断次第」


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大阪堂島商品取引所(岡本安明理事長)は3月17日、新潟市内で「コメ先物取引〈産地〉セミナー〈新潟〉」を開催した。3月に3か所で開催する産地セミナーの1回目にあたる。新商品「新潟コシEXW」は別途、単独セミナーを開催する。

今回は、まず岡本理事長が挨拶。「4月以降、株式会社化しても、コメが堂島の中心であることに変わりはない」点を強調した上で、「今年8月7日の“最終”試験上場期限に向けて、本上場が叶うよう皆さんのご協力を」求めた。

また農林水産省食料産業局商品取引室の渡邉泰輔室長が登壇し、制度を説明。現役の監督官庁職員がこの種のセミナーに登場するのは極めて異例だ。

このなかで渡邉室長は、「商品先物で皆さん(コメ生産者)の経営をどうこうしようなどという気は毛頭ない。あくまで多様な取引の一つ――“柱”にしていただければ、それはそれでありがたいが、こちらがそれを押しつける気はないし、あくまで多様な取引ツールの一つ。うまく利用できれば経営の保険にもなる。先に価格を確定できるし、とりっぱぐれもない。あとは使いよう。是非お考えいただければ」などと述べた。

取引所側からは、営業推進アドバイザーの高原幸男氏(元岡安商事(株)執行役員)が登壇し、仕組みや取引手法を説明している。基調講演2題の概要は以下の通り。

基調講演I コメ先物取引の機能と活用事例〉
(木津みずほ生産組合・坪谷利之代表)
▽1983年(昭和58年)、旧横越(現新潟市江南区)に設立。新潟コシの指定倉庫である新潟輸送(株)京ヶ瀬低温倉庫が近隣にあるため、先物の現物受渡としては有利な立地。現在は概ね50ha(稲作のみ)で営農しており、うちメインのコシヒカリは20ha作付。そのほとんどを精米で直売している。

しかし毎年9月頃になると在庫調整が必要になる。そのため前年の8月頃、その当時の新米を何枚か先物に売っておく。翌年の9月になって思わぬ在庫が出て来たら、そのまま先物に現物を渡せばいいし、足りなくなれば差金で買い戻せばいい。うちはそういう使い方をしている。

差金で買い戻す場合、差損が出そうな気がするだろうが、日本のコメ先物は、年間を通じてそう大きく乱高下しない。また現物価格というか単協の概算金が内税なのに対し、先物は外税。この違いが多少の差損も吸収してしまう。

▽世界中が人口爆発による食料難に見舞われているが、日本の米だけが余っている。だから生産調整せざるを得ない。マスコミは「生産調整が廃止された」と間違ったメッセージを出しているが、配分が行われなくなっただけ。しかし国内主食用需要は毎年およそ10万tペースで減少しているのだから、販売先を持たない生産者は毎年1.5%ずつ主食用の作付を減らさなければいけない。つまり(自主的な)生産調整だ。

▽そもそも農業経営で一番問題なのは、「今年の米価」が事前に分からない点。農業経営するには利益を確保しなければならない。利益とは「売上-経費」だが、現状は「売上がいくらになるか分からないまま遮二無二コストを下げている」状態。むしろ「売上がいくらになるから、コストをいくら下げなきゃいけない」が本来のはず。その指標になる一つが先物だ。

▽よく「主食である米を投機の対象にしていいのか」という指摘がある。確かに、かつて米が恒常的に不足していた時代は、金持ち(投資家)が買い占めて値段が上がるのを待った。しかし今は恒常的に余っている時代。実際に金持ちはコメ先物に入って来ないではないか。国内の商品先物の一番人気は「金」だと聞く。これだけでも「投機」云々が理論的に破綻しているのが分かる。要するに、使いたい人が使う仕組みがあって、使いたくない人は使わなければいいだけの話。

例えばラーメン屋に、「オレは味噌ラーメンが嫌いだから作るな」と言っているようなもの。嫌なら注文しなければいい。味噌ラーメンが好きな人もいるからメニューが存在している。誰も注文しなければメニューから消えてなくなるだけのことだ。

▽毎年8月頃、組合長会議の席に全農新潟県本部がその年の仮渡金(本紙註=新潟では概算金をこう表現している)を提示する。それまでその年の米価は「分からない」。にもかかわらず作付する。私には不思議でならない。

私は地元農協(新潟市農協)の経営管理委員を務めていて、先月、こんな提案をした。今年の仮渡金は恐らく13,000円を切るでしょう。これは内税。いま先物(新潟コシ当限)は14,100円。こちらは外税。今のうちに農協として何枚か売っておいたらどうですか――もちろん農協は売らなかった。今年の8月どう申し開きをするのか、今から楽しみにしている。

▽繰り返すが、(先物を)使うか使わないかは各人の判断次第。あくまでも販売チャンネルの一つ。

単協は、悔しかったら先物より高い売り先を組合員に提示すればいいのだ。この後、北蒲みなみ農協の方がお話されるそうだ。とても勇気がいることだったと思う。私も興味津々、耳をデカくして聴く。

基調講演II JA北蒲みなみに於けるコメ先物取引活用事例〉
(JA北蒲みなみ営農営業部・齋藤政幸販売課長)
▽・・・非常に話しづらいのだが(笑)。周知の通りJA系統ではコメ先物に対して反対もしくは慎重な姿勢を示しており、今回の講演依頼も当農協の役員の了解を得て引き受けた。というのも新潟県内の単協で最初にコメ先物に取り組んだのが当農協だとバレてしまうから(笑)。

▽当農協は阿賀野市にある。管内粋で面積6,500ha。販売事業販売高27.3億円のうち24.6億円を米穀が占めており、比較的「米に特化した農協」と言える。しかし、この販売高も県下単協では下から5番目。数量ベースだと、令和2年産集荷数量が約17万俵。うち主食用14.5万俵。当農協は全農委託率2割ほどで、指定卸10数社との結びつき(3者契約)による直売が主流。

▽2017年(平成29年)3月、ちょうどこの場所(万代シルバーホテル)で開かれた「新潟コシ先物セミナー」に、当時の部長と私とで参加したのが最初のきっかけ。帰りの車内で「うちの農協でも活用できないか」と相談しあった。

その後、取引所や岡安商事(株)から何度かアプローチを受けたのだが、最終的に最大のネックになったのは役員の了解だった。同じ年の6月に口座を開設。10月に証拠金を入金。差金決済には一切手を出さず、目的はあくまで現物販売先の補完。8割を占める直売にはどうしても調整が必要な局面があり、そこを補完したいのが一つ。

毎年4月に生産者在庫を見直す「もう1俵出荷運動」を行っており、その販売先にあてたいということもあった。加えて管内に指定倉庫があったため、自分で持って行けば運賃がかからないことも利点か。

▽今までコメ先物取引に取り組んだのは計4回。計350俵(14枚)。平成30年6月限で平成29年産を売ったのは試験的なもの。こちらはあくまで現物販売先の1つと捉えているため、価格そのものは外税だが、保管料、包装代、輸送量など実際に売り渡す際の経費総額が全く分からなかった。感触を掴むために取り組んだようなもの。平成30年産は平成31年4月限と令和元年6月限で売った。令和元年産以降は今のところ取り組んでいない。

▽たまたま現物価格が上昇期にあったため農家手取りの向上に繋がったことも大きいが、一番大きなメリットは、(販売)相手先を探さなくていいこと。

〈米麦日報2021年3月19日付〉

記事提供元:https://www.ssnp.co.jp/news/rice/2021/03/2021-0319-1555-14.html
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