日本加工食品卸協会が飲食料品の安定供給に総力、国民の安定的な生活を確保へ/奥山則康専務理事


日本加工食品卸協会 奥山専務理事

日本加工食品卸協会 奥山専務理事

食品卸売業では、かねてから物流のひっ迫等が大きな問題となっており、課題が山積していたところだったが、今般の新型コロナウイルス感染症の影響が振りかかり、さらなる対応が迫られるようになっている。現在の業界の課題とそれへの対応などについて、日本加工食品卸協会(日食協)の奥山則康専務理事に話を聞いた。

――足元では新型コロナウイルス感染症の影響が色濃く出ている。それらに対する食品卸売業、貴協会の対応について。

4月7日に緊急事態宣言が発令された。我々は社会機能維持者として事業の継続が求められており、国民の安定的な生活の確保のため、飲食料品の安定供給に総力を挙げて取り組んでいるところだ。

具体的には、農林水産省から出された事業継続に関する基本的なガイドラインに沿って、各食品卸企業が事業継続計画(BCP)を立案し、これに基づき業務を遂行している。当協会が2008年度にプロジェクトを組んで作成した「新型インフルエンザ対策」ガイドラインも参考に、BCPを計画していただくよう啓発してきた。

また、各食品卸企業がリスクに直面しながら飲食料品の安定供給に向けた物流機能を維持するため、行政に対しては
〈1〉マスクの優先支給
〈2〉感染時の消毒体制支援
〈3〉食品小売に供給する卸機能の周知
〈4〉生活者の冷静な購買行動の周知
〈5〉安全な公共交通機関の確保
――といったことを要望している。

〈1〉に関しては、食品物流現場でマスク、または体温計等の物資が不足しており、これらを所管する関連省庁に対して、食品物流のための作業、配送を担う方々を守る意味からも会員卸に対する斡旋、情報提供等マッチングをお願いしている。

〈2〉では、万一従業員の罹患者が出た際、封鎖・消毒といった一連の作業を極力短く、安全に行えるよう、保健所等の指導・支援を頂けるようお願いした。

〈3〉は、有事のライフライン維持のため、食品スーパー等小売業の役割だけでなく、緊急時にも止まることなく食品を供給している卸売業の役割についても国民の皆様に周知していただきたいということ。外出自粛等あっても動き続ける必要がある。

〈4〉はメーカーからの供給が止まらない限り、緊急時にもメーカーより商品を荷受けし、供給を継続する。1人の買い走りが流通に混乱を与える可能性があることからお願いしている。

〈5〉は緊急事態宣言時も機能維持のために通勤する必要がある社員が多く、公共交通機関の極端な減便など、安全に支障をきたす可能性があることは行わないでいただきたいということを要望した。

現状では、一部でメーカーが製造を主力商品に集中し、その他の商品が休売になるということもあるようだが、それは枝葉の話であり、サプライチェーン全体がそれぞれの役割を機能させて対応できているのではないかと思っている。 今後はゴールデンウィークの連休中と、連休明けの物流が課題となる。連休について、昨年は10連休という大型連休の物流が課題となったが、今年はカレンダー上では5連休であり、様相は異なるものの基本的にはステイホームが推奨される中で、どのようになるか。ただ、連休明けの供給については、メーカーの製造が休み中にすべて止まるようであれば心配も残る。メーカー・卸の双方でテレワークも使われるようになる中、互いに不測の事態時の連絡先等を確認し、物流の円滑な遂行に協力していく必要がある。

――新型コロナウイルス感染症出現以前の平時でも、食品物流ではさまざまな課題があった。

物流環境の変化から、食品物流の持続可能性を目指す中で、全日本トラック協会からのリードタイム延長化という提言を受けて、メーカー各位からはリードタイム延長化の要請が相次いだ。我々卸は、物流環境の変化は理解するものの、この要請に対応しようとすると在庫の増加、増床、自動発注システムの見直し、メーカーの直物流から倉出し物流への切り替えなど多くの負担・リスクが発生してしまう。こうした課題はサプライチェーン全体で解決すべきと考え、当協会としても発信し、製・配・販連携協議会の場で議論していただいている。

私としては、社会的にもリードタイム延長化は理解していかなければならないと思うが、メーカー・卸間でまず優先してその環境整備に取り組むべきだと思う。具体的にはASN(事前出荷情報)システム、N-Torus(日食協トラック入荷受付・予約システム)、標準パレット、標準納品伝票の活用などが挙げられる。環境変化に柔軟に対応しながらサプライチェーン全体で取り組む最適化によって得られるメリットを相互に享受していくことが重要であり、一方的な要求だけでは流通のイノベーションは進まないと思っている。

なお、国土交通省も前年度末に「加工食品分野における物流標準化アクションプラン」を策定した。物流の生産性向上に向けて、関係者の連携・協働による納品伝票、外装表示、パレット・外装サイズ、コード体系・物流用語の4項目について標準化に取り組むとしている。

――N-Torusの進捗について。

N-Torusは、トラックドライバーの荷待ち時間短縮を目指したトラック入荷受付・予約システムとして、当協会が業界標準を目指して開発したもので、2019年3月から本稼働を開始した。物流センター等でトラック入荷の「予約」「受付」および今後の改善に繋がる「実績確認」という3つの機能を備える。これまでに卸のみでなく、メーカー・小売も含めた46拠点でご活用いただいている。近々のうちに約70拠点へと拡大予定で、当初目標の100拠点導入まで順調に進捗している。

――消費税インボイス制度への対応について。

2023年10月のインボイス制度導入に向け、この4月から始まった今期の協会事業計画として「インボイス制度対応専門部会」を設置して、調査研究する。軽減税率制度への対応はシステム関係の人たちを中心に活動してきたが、今回は経理業務、税務経理、EDI関係など幅広く人材を集めて検討する必要がある。また、ISDNデジタル通信モード提供の終了問題とあわせ、流通BMSシステム改修対応もあり、時間的にも制約があるため、早め早めに準備していきたい。

――今年6月に施行されるHACCP義務化について。

HACCPの考えを取り入れた衛生管理は、今年6月施行、1年の猶予期間を経て2021年6月に完全施行となる。昨年から準備を重ね、今年3月『冷凍・冷蔵商品販売事業者(加工食品卸業)に向けた温度管理を必要とする加工食品の販売に関するHACCPの考え方を取り入れた衛生管理の手引書』を、当協会が策定代表となり、一般社団法人日本外食品流通協会、一般社団法人日本給食品連合会、全国給食事業協同組合連合会とも連携して取りまとめた。これをまとめるにあたっては、外部機関へに委託し、温度管理の実行可能性も検証した。たとえば、夏の気温37℃の中で実際に車両やシッパー(保冷容器類)等を用い、現行作業でも十分品質を保持できることなどを確認している。

〈冷食日報2020年4月30日付〉

記事提供元:https://www.ssnp.co.jp/news/frozen/2020/04/2020-0430-1033-16.html
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