規制改革推進会議「農産物検査はJASで代替可能」


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農水省は「JAS案」応じず慎重姿勢堅持も、座長は再考求める

内閣府は4月21日、オンラインで規制改革推進会議の第9回農林水産ワーキング・グループ(WG)を開催し、「農産物検査について」をテーマに事業者・農林水産省からヒアリングを行った。今回は新たな焦点として「JASの活用」がテーマに挙がった模様だ。(以下は内閣府への取材に基づく)
 
〈前回WGおさらい

(公社)日本農業法人協会の要請を受けて開催された第7回WG(3月10日)では、「食品表示法上の3点セット表示(産地・品種・産年)要件である農産物検査義務を撤廃すべき」「3点セットの表示要件として、農産物検査の撤廃については直接取引に限らず、卸・流通取引についても含めるべき」「ナラシ(収入減少影響緩和交付金)や水田活用の直接支払交付金(以下、水活直払)の交付要件(としての検査受検)を撤廃すべき」などの“宿題”を農水省に突きつけていた。

ヒアリング〈1〉 (株)ヤマザキライス

同社は埼玉の農業生産法人(日本農業法人協会の会員でもある)。「生産現場からの意見書」という体裁で、「1~2等級表示の廃止」「検査の簡素化」「選択制自主検査の導入」を要請。

生産・品質管理体制が整っている生産者に限定して、農水省が認証した穀粒判別器による「自主的品質表示制度」の導入を求めた。この場合、エビデンスは米トレサ法で裏付けし、諸々の責任は生産者が負うとしている。

また、米トレサ法で生産履歴が追える生産者については、一定要件を満たせば、未検玉であっても3点セット表示を可能とすべきとも。なお、従来の検査と位置づけは同等に――とし、「販売先が穀粒判別器の判定を必要としなければ、自主判定も必要ないものとする」とも付記している。

また、ナラシや水田活用の直接支払交付金の交付要件に検査受検を求めるのは「とても違和感を覚える」としているほか、「検査等級は消費者にとって必要性のない情報なので、公的制度としての検査等級は段階的に廃止すべき」など、法人協会の提言書と足並みを揃える内容となった。

ヒアリング〈2〉 千田みずほ(株)

千田法久社長がオンライン出席。現行の目視検査は未熟粒やシラタなど、機械での判定が難しい部分まで確認ができる一方、目視であるが故に人的ミスが発生する点を懸念。農産物検査は「品質劣化の歯止め機能にしか過ぎず、『1等米比率向上が品質向上や生産者のレベルアップに繋がる』という認識は的外れだ」「特A基準に依存しなければ米が売れないと考えている過去の委託販売制度の悪しき産物」と指摘した上で、「“必ずしも食味に反映されるものではない”と生産者から消費者までが共通認識できれば、機械検査に頼るほうが有効だ」としている。

そのため、
▽3点セット表示は検査証明がなくとも米トレサ法で確認可能
▽「産地未検査」表示は誤解を与えるので、品質が同一であれば(検査玉と)同様の扱いにすべき
▽(現行検査は)2者間・特定対象者間での取引商品では不必要な手間・経費がかかる
――と指摘し、「現行制度を見直し、機械検査ベース(相対基準含む)の、正確でスピード感のある仕組みを構築すべき」と結んでいる。

ヒアリング〈3〉 JAS関連

(一財)日本品質保証機構(第三者認証機関)と正林国際特許商標事務所がJAS規格の活用を提案。日本品質保証機構は、検査コスト削減や作業記録負担の軽減、既存の登録検査機関(一例として穀検が挙げられている)の活用などのメリットを挙げた。

正林国際特許商標事務所は、JAS法が(酒・医薬品などを除く)全ての農林物資を対象としていることから、「農産物検査法で米穀などのみを規格・規定することは合理性がない」と指摘。2017(平成29)年のJAS法改正では、「民間事業者からの提案による規格化」「登録試験所制度の導入」がスタートしたことで、農産物検査制度に代替できるとしている。

具体的には、
▽現行の検査規格をJAS規格として新たに制定
▽自社で品質保証可能な生産者は、JAS法上の登録認証機関の認証を受けた認証事業者となる
▽現行の登録検査機関は、JAS法上の登録試験業者に移行。自社保証ができない生産者は、この登録試験業者に検査を依頼
――という案を提示した。

現行の農産物検査が任意検査であることから、「農産物検査のJAS化により、農産物検査法は不要に」なるとしている。

ヒアリング〈4〉 農水省

説明者は天羽隆政策統括官(前回は平形雄策農産部長)。2019年年3月まで開催した「農産物規格・検査に関する懇談会」の中間とりまとめから、現在の「農産物検査規格検討会」まで、これまでの検査見直しに向けた対応を改めて取り上げ、検査コスト・時間が一定程度削減されることになると説明。その上で前回同様、
▽令和3年産から直接取引に限定したナラシ・水活直払と検査受検とのリンク撤廃
▽直接販売に限定した3点セット表示と「未検査」表示の併記
――などを検討していると説明した。

議論〈1〉 JAS

▽「機械検査では品種の違いが判定できないが、どうするのか」
▽「有機JASは特別な栽培方法には適しているが、申請や監査の面でコストの問題がある。特別な米については良いが、JASが農産物検査法に取って代わることはできると考えるか」

――という委員からの意見に対し、JAS関連2事業者は

▽「機械検査に関しては書類を確認すれば良い。現行でも書類確認やDNA(鑑定)がある。第三者認証でも同じ考え方とし、文書で根拠を証明する形。生産者が何らかのエビデンスを示すやり方なので、検査法で行っていることを担保する形で規格を作ることは可能ではないか」
▽「検査は生産と流通との間の話なので、国が関与して検査を作る必要が必ずしもあるという話にはならないのではないか」
――などと回答した。

数名の委員は、
▽「この制度自体が時代遅れになっているのではないか。例えば金融の世界ではベストプラクティスを取り上げる制度に移行しつつある。ダウンサイドからアッパーサイドを狙う方向に変わりつつある。ISOやJASなどで民間の力を取り入れ、その中で(規模・段階別の)プレイヤーごとに検査の中身を作るべきではないか」

▽「現行制度の信頼性が低くなっているのではないか。制度が求めていることと民間が求めていることに違いがあり、JAS法・規格を活用すべき。一旦、廃止するくらいの覚悟で検討し、民間が求めている品質の担保をどうすれば良いのかということを考えるべきではないか」

▽「農産物規格が生産者にもユーザーにも消費者にも卸のためにもなっていないので、このままでは農産物検査法の存在意義が全く無い。農業者所得の向上に貢献するため、消費者、ユーザーにアピールできるような付加価値向上に繋がる規格に生まれ変えるべき」

▽「今日の議論を踏まえると、安全性や食味など、消費者・ユーザーが求める要素を規格に盛り込んだ上で、JASに移行することも考えても良いのでは」
――と、JASの活用を後押しする姿勢を見せた。

これに対し農水省は、「JASは差別化を求めるための基準であって、農産物検査は(任意検査ではあるが)ユーザーなどから検査を求められると断ることができない類のものだ」とし、現行検査の代替とする案には懸念を示したが、委員からは「工業品の場合に、零細企業があるからといって規格が作れないという話にはならない」と反論の声が挙がった。

農水省は「農産物検査をしないと表示ができないという制度は変えたいと考えている。しかしながら、米の世界では過去に(事故米などの)事件も起きている。直接販売に関しては『検査せずとも表示を行いたい』というニーズが大きいことは十分踏まえ、検討していきたい」と答えた。つまり、これまで以上の譲歩はしなかった。

議論〈2〉 その他

JAS以外では、「検査コストが高いので、コスト削減にしっかり取り組むべき」という声が挙がり、意見を求められたヤマザキライスは「実際、農水省が最近やってきたマイナーな改正でコストが下がってきている」と、これまでの農水省主導による検査見直しを一定程度評価した。

一方、等級について同社は「1等と2等は300円の価格差しかなく、消費者には結局(2等が)届かないものなので、(1等と2等を)併せて合格などの規格に変えれば良いのではないか」としているが、3等と規格外については「消費者を含め、流通や実需の取引に大きく影響するため、厳しく表示する必要がある」ともしている。

このほか、農水省が示した「直接販売に限定した3点セット表示と『未検査』表示の併記」については、「消費者に正確な情報が伝わるよう、考え直したほうが良いのではないか」という意見が出ている。

議論の終盤、ある出席者(委員ではない)は「農業に限らず、そもそも自分が作ったものは生産者で責任を取るのが原則なのに、ヤマザキライスのような意欲的な農家が産地・品種・産年というもっとも原則的な品質保証ですら、自分でできないのはあるべき姿ではない。1等米、2等米と等級が違っても特段食味が良くなるわけではなく、消費者にアピールできていない点が問題だ。農業者所得の向上に向けた規格として、ゼロベースで作り直すことを考えてみたらどうか」と農水省に水を向けている。

結論

佐久間総一郎座長(日本製鉄(株)顧問)は第9回WGの総括として、「どんな形でも生産者が自ら作って保証するということなので、ある程度の検査は必要だ。ぜひ、抜本的な改革をお願いしたい。その一つが、今日提案があったJASの活用だが、JASは特別なものにだけ適用されるものではないと考えている。いずれにせよ、抜本的な改革を導入する際には、現場の混乱無く、コストの最小化を考えなければならない。その上で、3点セットの表示要件としての農産物検査の撤廃ということに関しては、直接取引に限らず、卸取引の米についても行ってほしい。未検査米については検査米と同等の扱いを行うべく、未検査の表示義務付けは行わないでほしい。ナラシ・水活直払の交付要件としての農産物検査の撤廃についても、直接取引に限らず、卸流通取引の米についても行ってほしい」と、農水省に再考を求めた。

〈米麦日報2020年4月27日付〉

記事提供元:https://www.ssnp.co.jp/news/rice/2020/04/2020-0427-1323-14.html
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