〈アイスクリーム市場〉巣ごもり必需品ならずも癒し役に、新しい切り口で拡大図る


〈アイスクリーム市場〉巣ごもり必需品ならずも癒し役に、新しい切り口で拡大図る

冷凍庫のスペースがアイスの購入に影響を

2019年度(2019年4月〜2020年3月)のアイスクリーム市場は、前年比1%減で着地し5,000億円超の規模を維持した。18年度まで7年連続で市場を拡大(最高売上高更新は6年連続)し、連続成長は途絶えたものの最高水準は守れた。

冷夏の影響で7月単月が23%減だったにもかかわらず微減にとどめることができたのは、2019年春の価格改定(130円が140円へ、330円が350円へ)後も買い控えが大きく起こることなく新価格を浸透できたからで、改定分が売り上げに貢献し、夏のマイナス分を補填した。

2020年度は新型コロナウイルスの影響、巣ごもり、食品買いだめにより家庭冷凍庫は満杯の状態で、アイスは生活必需品度も高くないため買い置き需要は弱いが、自粛の中での癒しデザートとして一部動きのいい商品もあり、需要自体は極端に冷え込むことはないとみられる。特に購入リピート率が高い定番商品は、度重なる改良で品質レベルが上がり、消費者にとってコストパフォーマンスに優れたデザートとして支持されている。メーカーはこれら既存品の売上基盤を底上げし、確かな事業成長を狙っていく1年となりそうだ。

定番品だけでは店頭回転に限界も

2020年度のアイス市場については、「伸長は鈍化するのでないかと予測。2019年7月冷夏のマイナス分は、今年7月が暑くなれば取り返し、その分が上乗せにはなるが、値上げも限界にきていること、また冬アイス、大人アイスも伸びしろが少なくなっていることから、通年では厳しい年になると見ている」(メーカー)。

2020年度は新型コロナウイルス感染症の拡大と、オリンピック開催延期の国内経済全体への影響から、7年連続成長してきたアイス市場も、昨夏の落ち込みを取り戻せても踊り場状態が続くとの見方が強い。最大の懸念材料は購入者離れ。消費者購買履歴データQPRのトレンド分析によると、2019年8月は平均気温が前年より高かったにもかかわらず、アイス購入者は前年より減った(購入率は前年比約4%減)として、この数字を重く受け止めているメーカーもいる。

「仮説ではあるが、アイス売り場は7〜8月に同じ商品が並んでおり、例年7月の気温上昇とともに入ってくるトライアル購入者が、昨年7月は売り場に来ても暑くないため買わず、気温が上がった8月に再び売り場に来たが、あの時買わなかった商品しか並んでおらず(欲しい商品が無く)、購入数が減ったのではないかと見ている」(赤城乳業)。

あの時買わなかった商品とは、夏季限定フレーバー商品など季節的な商材。リピート購入率が高い定番の年間商材はそこまで影響は出ていない。商品が消費者に飽きられるのが早くなってきたこと、季節的な商材は目先を変えないと売り上げがついてこないこと、これらが明らかになった。

8月の購入が減った分の需要がどこへ流れたのかは、「他のデザートへ多少流れたかもしれないが、コンビニに限れば7月にチルドデザートも伸びていない」(赤城乳業)。どこかへシフトしたというより、もともと購入頻度が高くない人は買わず、ヘビーユーザーが支える需要構造となり、単純に購入者が減ったと推測される。それは、購買意欲を突き動かす商品が足りていない、定番品だけでは店頭回転がそろそろ限界に近づいたと、とらえることもできる。

秋冬限定の商品の通年販売化で成功

アイス市場はこれまで、子どもや女性のおやつから、平成の後半は「通年型デザート」への価値の広がりで成人男性も取り込み、冬アイス需要の創出、コンビ二での中間・高価格帯商品の定着、シニアの取り込みなどで、着実に規模を拡大してきた。クッキーやナッツなど菓子素材を取り入れたアイスのデザート化が進んだことも拡大の理由。しかし、デザート化したアイスも売り場に定着した今、カップ、バー、モナカ、コーン、一口タイプ以外の形態からくる新しさがなく、味のバリエーションに偏った製品サイクルになっているのも事実。これが暑くて売り場に来ても買わないで帰る人が増えた要因の一つになっているものと思われる。

だからといって国内経済が不透明な中、設備投資を伴う新しい形態の着手は難しい。形態以外の切り口で新しさを出すには、新しいニュースの発信や、今ある形態の中でも斬新さあふれる新商品の発売など、やり方の工夫で消費者の関心を掴んでいくしかなさそうだ。

新しいニュースについては既に成功例がある。秋冬限定の商品の通年販売化で、2018年にロッテが「雪見だいふく」で成功した。2020年春は他メーカーでも秋冬商品・フレーバー品で通年販売化を始めており、これら決定は新型コロナウイルスによる経済影響の前ではあるが、結果として既存品の売上基盤の底上げで、確かな事業成長につなげていく流れになっている。

野菜をコンセプトにした切り口で新たなチャンスを狙う

また、今ある形態での目新しい商品については、この春は江崎グリコの野菜をコンセプトにしたパピコ「パピべジ」が代表格となる。チューブ型容器の2本入り形態、通常タイプの半分の大きさで、価格も値頃にし、野菜を取りたい根強いニーズに切り込んでいく。野菜をデザートのように味わうアイスは、2014年にハーゲンダッツジャパンがカップ入りで挑戦したが、市場に定着できなかった経緯があり、その後ブーム化した野菜スムージー、このイメージに近い「パピべジ」が、親になった女性や若者たちに受け入れられるか注目だ。

「どの切り口にチャンスがあるのかを、テストマーケティングで確認するといった方法も増やさねばいけない」(メーカー数社)。

足元は外出自粛の中の癒しデザートの役割をアイスが担い、販売は悪くないが、市場を成長路線へ戻していくためには、既存品の売上底上げとともに、どの方向にチャンスがあるかを探る1年になりそうだ。

〈食品産業新聞 2020年4月13日付〉

記事提供元:https://www.ssnp.co.jp/news/milk/2020/04/2020-0415-1007-16.html
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