業界人が語る・日本の食品企業がこれから果たすべき責任と役割


私は食品系商社の輸入部門に勤めており、世界中の国から食品原材料を調達し、日本のマーケットに販売する仕事をしています。仕事をする上で、誰しもモチベーションを持ち取り組むことが望ましい中、自分自身が携わる業界が社会に対してどのような意義を持ち、どのような責任を負っているかを理解し俯瞰することは、協力なバックボーンとなり、時に強い原動力となります。

今回は、食品業界に携わる者の目線から、食品業界が社会に果たすべき責任と役割にについて、書いてみたいと思います。

日本の食を守る安定調達機能

農林水産省によると、2018年の日本の食糧自給率は37%(カロリーベースによる試算)となり、過去最低を記録しました。食糧自給率とは、国内で消費された食料のうち、国産の占める割合を示しており、他国に比べて、食料の調達に海外に力を借りている構図となっています。また、少子高齢化により、国内の就農率は年々下がってきており、昨今では度重なる災害から立ち直ることができない生産者も出てきており、国産品のサプライチェーンは年々厳しい状況にあります。

こうした状況でも私たちが毎日変わらず食事を楽しむことができるのは、食品商社が世界中のネットワークを使って代替品となる原料を買い付け、その原料を国産品と遜色なく加工する食品メーカーの技術の賜物です。海外のサプライヤーの日本への評価としては、一度商売をスタートさせると長い商売となり、また支払い等のお金にきっちりしていることから、ビジネスパートナーとして積極的に付き合いたい相手という見方が多いです。

最近では、中間所得層が増え、食の欧米化が進む中国を中心とした買いに旺盛な国々との調達競争にある中、日本は長年の信頼により、安定した調達を実現しています。過去より、輸入品を活用する力を付けてきた賜物と言えるでしょう。

安心・安全を実現する品質管理

食品業界では、日本の企業ほど品質に対して、厳しい基準を設けている国は無いと言われており、日本品質をクリアすることは、各国のサプライヤーにとって一つのステータスになっているほどです。例えば、食品原料の加工においては、大規模な生産ラインに様々な設備、機材が使われており、いくつもの生産工程を通り、製品が出来上がります。

その工程には、金属部品や樹脂製品といった、人の口に入ってはいけない“異物”とされるものも使用されており、工程を細かく観察し、破損のリスクや仮に破損した場合にセーフティとなる工程が機能しているかどうかを見定める必要があります。古い工場や立ち上がったばかりの工場においては、こうしたリスク分析を複数の厳しい目で評価することが望ましく、こうした評価、指導は日本企業にノウハウが強いという認識が各国のサプライヤーの間にあるようです。

特に、お隣の中国からは、凄まじい量の食品が輸入されていますが、それぞれのサプライヤーには日本語が流暢に話せる人材が必ず居り、日本の食品メーカーの品質管理指導を熱心に聞き入れ、すぐさま品質改善に向けたアクションを起こしています。

最近では、ポスト中国を狙って、東南アジアのサプライヤーや2019年に発効された日欧EPAの恩恵にあずかり、EU諸国のサプライヤーも日本に接近し、日本品質への対応による自社レベルの向上に期待を寄せてきています。このように、安心・安全を実現する品質管理の追及が世界中からの安定した食品の輸入の実現にも繋がっています。

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食を通して、豊かなライフスタイルを実現する

時代の流れの中で、人々のライフスタイルは大きく変化し、その変化に沿って食のニーズも変化してきました。3世代が食卓を囲んでいた頃には、商店街に八百屋や魚屋、肉屋といったそれぞれの専門的な小売業者が活況でしたが、経済発展の中で自動車の普及や都市化が進むことで、土地のある場所で大型のスーパー等の小売業者が発達し、スケールメリットを活かした、安くて質の良いものが手に入るようになりました。

更に、高度経済成長や女性の社会進出も活発化し、忙しく働く人々をサポートするように遅い時間まで開いているコンビニが発達し、手軽に時短できる食品が提供されるようになりました。現在は、少子高齢化のトレンドにあり、その波は、消費者だけでなく、食品加工業側にも変化をもたらしており、できるだけ、加工した手間の掛からない商品へのニーズが高まってきています。

具体的な例を挙げると、スーパーのバックヤードで調理を担当するパートさんが不足しており、調理の手間を省きたいというニーズに対して、タレ、具財、レシピをセットで販売し、炒めるだけで、お惣菜が作れるようなキット商品に人気が出ています。

他にも、スーパーこだわりの鶏の唐揚を海外の工場にレシピごと移植し、日本ではフライヤーで揚げるだけといったことまでやっています。このように、食品業界では、時代の変化や社会的問題にもしっかりと向き合い、その都度ニーズに沿ったビジネスを仕掛けることで、私たちの豊かなライフスタイルの実現に役立っています。

環境に配慮した持続可能な食品流通の実現

食品業界では、環境というワードが盛んに叫ばれるようになってきました。日本に着目してみると、平成28年の農林水産省の調べでは、年間の食品廃棄物は、なんと約2,759万トンにものぼり、食べられる食品である「食品ロス」は実に約643万トンにもなります。参考までに、1年間に日本に輸入されてくる「食べることを目的とした」冷凍野菜の輸入量は約105万トン(2018年)ですから、無駄に廃棄されてしまう食品の量には驚きを隠せません。

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