食品業界の時事問題【賞味期限・食品ロスについて】


賞味期限を延長することの意味と意義について

2016年1月に、キユーピーは主力商品のキユーピーマヨネーズの5商品と、キユーピーハーフ全商品の賞味期限を従来品に比べて2か月延長すると発表したことが注目されています。特に注目される理由として、これが「賞味期限を伸ばす」だけの問題にとどまらず、もっと大きな「食に関わる現代の社会問題」につながる出来事だからです。

水の賞味期限表示の変化

「キユーピーの賞味期限延長」に関連して以前に食品業界で話題になったのは、2013年の水に関わるニュースでした。大手飲料メーカー5社(アサヒ飲料、伊藤園、キリンビバレッジ、サントリー食品インターナショナル、日本コカ・コーラ)が、水の賞味期限を一部商品に限り「年月日表示」から「年月表示」に変更することを発表したのです。

2013年の1月30日(日付単位)などと賞味期限の記載があったものを2013年1月(月単位)という表示することに対して、「おおざっぱだ」「もっと詳細な情報でないと食品メーカーとしての意識が低いのではないか」というような声も上がりました。

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賞味期限を迎える前に、売れなくなる世の中

次に、賞味期限に関する食品メーカーの意識と消費者の意識を見ていきましょう。

【*食品メーカーの立場】
飲料メーカーの営業担当者として小売業の店舗を見てまわった時に、賞味期限が近い自社製品を見つけるとします。そうすると、それを返品処理したり、店側が廃棄をしたりすることがありえます。なぜ食品メーカーは早めに回収するのか、なぜ売っている店も早めに売り場から下げて廃棄してしまうのか。それは消費者の為だと思っているからです。また賞味期限の切れた商品を売ってしまうことで、企業として大きな問題に発展してしまうかもしれません。

【*消費者の立場】
ポテトチップスやペットボトルのジュースなどの賞味期限を気にする人は比較的少ないと思います。それに比べるとマヨネーズも含め、生の商品は当然、賞味期限を気にして売り場から選び、かごに入れて買い物をします。牛乳など、奥のほうから取って新鮮なものを買う人がいたりします。それはなぜかといえば、古いものより新鮮なものが良いからです。
私はスーパーで働いたこともありますが、多くの人が牛乳を奥から取ってしまうと、古い日付の牛乳が残ることになり、値引きをして売れればまだしも、結果として廃棄となってしまう牛乳も存在するのが事実です。非常に難しい問題だと思います。スーパーの労働時間帯には「古いものから手前にあるのだから、それを買ってほしい」という売り手の想いもあります。しかしながら、私生活では私も同じようなことをして、新鮮な食材を選んで買ってしまいがちで、人ひとりでも、公私で鮮度に関する意識に違いがあるものです。

世界全体の社会問題としての食品ロス

食品メーカーや、小売業の鮮度管理は優れているのだと思います。そういう環境に慣れた消費者の気持ちは敏感さを増していきます。メーカーやお店はお客様あっての商売ですから、その鮮度への思いも加速していきます。期限前に気が付いて処分しなくてはと。結果、まだ食べることができるのに捨てられてしまう食品の多さ(食品ロス、または廃棄ロスと言う)がいま、世界全体の社会問題となっているのです。

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どれだけの食べ物が無駄になっているのか?

■食料廃棄物=【年間17,880,000トン(1,788万トン)】※農林水産省調べ
あまり多すぎる数字でピンときませんが、日本のお米の年間生産量は500~800万トンと言われていますから、いかに多くの食べ物が廃棄されているのかをイメージできると思います。(参考文献:セカンドハーベストジャパン

「飲料メーカーによる賞味期限の表示変更」に話を戻しますと、この表示を変える取り組みの趣旨をキリンホールディングスの社長(当時)はこのように語りました。「細かい表示を求める消費者もいるが、廃棄ロス削減や環境負荷低減にもつながることを理解してほしい」

大手飲料5社は競合同士ですが、飲料業界全体として食品ロスの問題に立ち上がったことの結果です。食品メーカーの気持ち・考え方が「お客様にとってのサービス」に偏らず、社会問題に取り組む姿勢に変化してきたことの証とも言えるでしょう。(参考文献:産経ニュース

キユーピーの賞味期限延長の趣旨は「食品ロス削減」

また「キユーピーの賞味期限の2か月延長の趣旨」も、食品ロス削減なのです。ただし、水の問題と異なるのは「賞味期限を延長できる商品改良を行ったこと」にあります。一般的に言われる賞味期限の判断による廃棄は、店で起きていることを取り上げますが、キユーピーは買って帰ったマヨネーズが食品棚に保存しているうちに賞味期限が過ぎてしまい廃棄につながるケースに焦点を当てたのです。

買ってもらえた時点で、食品メーカーの利益にはなるので、そこで食品メーカーとしての発想が終わってしまいがちですが、キユーピーの素晴らしいところは、買っていただいた商品をできる限り長くすることがマヨネーズのメーカーとして工夫・改良すべきことと考えたことに大きな意味と価値があります。

食品の劣化は「酸化」が原因となることが多いのですが、その「酸化」を抑える改良をした結果、賞味期限の延長が可能となったようです。※詳しくはキユーピーのニュースリリースをご覧になってください。

もったいないのに捨ててしまう罪の意識

私も飲料メーカーの営業時代に、まだ賞味期限が切れていないのに「賞味期限に近づいたから」という理由で回収作業をしていた時に「もったいないな」と感じていたことがありました。いま食品メーカーに勤務する人も同様に「もったいない」を感じている方も多いのです。

また食品メーカーや小売業などが、賞味期限がまだ切れていない商品を廃棄するのではなく、恵まれない人々に寄付をする団体に届けている活動も存在します。協賛企業は年々増えており、カレーのCOCO壱番屋も、キユーピーも協賛しています。

企業が食品を提供すると、ボランティア参加者がそれらの食品を有効に人に届ける作業に力を貸しています。私も飲料メーカーの営業時代にできなかった想いを、いま時々ボランティアに参加することで気持ちを返しています。参加している人の多くは皆さんと同じ学生(主に大学生)の方々です。

学生時代にクラブ活動や学問・アルバイトに打ち込んでいないと感じる方には、1日2時間程度の活動をすると「食べ物のありがたさ」を体感・実感できると思います。その経験は就活でも大いに生かされることでしょう。このボランティアに参加すると、私生活でも「残さずに食べよう」と気持ちの変化が自然と生まれてきます。

賞味期限と消費期限の違い

賞味期限と消費期限の違いを簡単な説明でお伝えしますと・・・賞味期限とは比較的劣化が遅い食品につけるもので「おいしく食べられる期間」を示しており、消費期限とは生のような劣化が早い食品につけるもので「その日を過ぎなければ、安全に食べられるもの」を示しています。

つまり「賞味期限」を1日過ぎていただけで「あー、もう食べちゃダメ、捨てなくちゃ」という考え方は間違っています。

[賞味期限と消費期限の違いをさらに分かりやすく書いているサイトはこちら]
「京都 生ごみスッキリ情報館」

就職活動でも押さえておくべき「賞味期限」と「食品ロス」

賞味期限についての問題意識が低く、利益追求に走ってしまった結果が、ココイチの賞味期限切れカツを売った廃棄業者だったりします。廃棄業者は当然ですが、利益重視で鮮度が不確かな食品の仕入れをする小売業にも大いなる問題点が残ります。

昨年(2015年)12月、サンリオが賞味期限の切れた原材料を使ったお菓子を販売していたことを発表(リリース)しました。お菓子そのものの賞味期限ならば、パッケージに記載があって判断できますが、原材料ともなると見つけることが大変だと感じてしまいます。

食品企業のモラルが問われる時代に、企業たちはモラルある社員を求めています。「賞味期限」や「食品ロス」に関する時事問題/ニュースについて理解しておくことは、2016・2017年以降の就職活動では重要になってくるはずです。

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