お菓子メーカーで商品企画部門を志望する前に知るべき現実


お菓子メーカー(お菓子業界)に属する企業を志望するきっかけは、店頭のお菓子やCM等の宣伝を見て「これを作る会社に勤めてお菓子作りに関する企画や開発をしたい!」と思われる方がほとんどかもしれません。しかし、お菓子メーカーに勤め、仮に製品開発部門(製品=可食部分)や製造部門に配属されたとして、念願のお菓子に携わることできるかといえば、そうではないことが多々あります。

それでは、商品企画開発部門に勤めた場合のカラクリについてご紹介しましょう。あくまでも一例ですが、一般的な働き方も把握できる内容になっていますので、学部学科問わず就活生はご覧いただければ幸いです。

お菓子メーカーの製品開発部門はこんなことをする

百貨店や駅ナカ、コンビニなどには美味しそうな洋菓子が並んでいますが、比較的大きな企業が量産していることが多いです。このような組織では、商品企画担当者が戦略や営業からの要望を加味して企画を起こし、製品開発担当者に「こんな製品を作ってください」と依頼がきます。もちろん、製品開発部門が「こんな製品を投入しませんか?」と提案することもありますが、多くは前者であると思われます。商品企画からの依頼に基づき製品の試作をしますが、ここで降りかかる諸条件がいろいろあり、“自分が本当に作りたい”と思うお菓子を作れないのです。

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まずは、原価です。原材料費や労務費などの数字に縛られます。これはお菓子メーカーのみならず街のケーキ屋さんであっても付いて回ることですが、量産故に非常にシビアであり、試算の段階で社内基準を超えてしまう場合は、商品化の許可が降りないことが多いです。

次に、工場のラインで製造できるように設計しなくてはいけません。例えば、使いやすい資材(カップなどの容器)がすでにあれば、ちょっとしたこだわりで他の形のものに変えるのはかなり困難なことでしょう。「あと少しだけ厚手のカップであれば、理想のしっとり感が出せるのに…」なんていうジレンマもあるかもしれません。

そして、配送に耐えられ、場合によっては日持ちすることが条件となります。販売店までは物流システムによって運ばれ、いくつかの運送会社を介すことも多々あります。製造したその日の販売はなかなか難しいことです。そのため、ショーケースの照明で退色しないこと、翌日に味覚や食感が変わらないことなど“品質維持”のために様々な条件をクリアしないといけません。

菓子業界には多様な消費者が存在し、絶え間ない創意工夫が必要であることから、商品ライフサイクルの早いことに特徴があります。それゆえに「継続的な商品開発」を求められるという課題に加えて、多品種/少量生産でロスの出やすい構造における「生産効率や在庫管理」も業界の課題となっています。

つまり、“作りたいお菓子”を作れるわけではありません。多様な消費者に向けて、“条件をクリアする、売れるお菓子”をいかに創り出すかが評価されるのです。

お菓子メーカーの製造部門はこんなことをする

では、実際にお菓子を作る工場や工房などの製造部門はどうでしょうか?ここは毎日毎日お菓子を作ることになると思います。しかし、それは設計書に基づくものですので、それに忠実に正しく作ることが求められます。決められた時間内に一定量を製造しないといけない場合が多いです。

それに、特殊な工房などを除きほとんどは機械が作るので、材料を投入したり、焼き色や異物混入の厳しいチェック、出荷準備などを担当することが多いでしょう。

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お菓子メーカーでなければ?

このように、お菓子メーカーはある程度組織的な企業であることが多いので、食品栄養系の短大生やパティシエ、調理師の方がお菓子づくりのために腕を磨いたり、自分の想いが詰まったケーキ等を創り上げることは難しいかもしれません。先輩も企業人であって職人ではありませんので、菓子づくりを極めた人がいるとも限りません。

企業であるお菓子メーカーは就職先として希望してしまいがちです。腕を磨くのであれば、信頼ある街のケーキ屋さん、またはホテルやレストランの製菓部門の方が成長するのではないでしょうか。

お菓子メーカーなりのメリットもあります

上記を理解した上で、あえてお菓子メーカーに就職するメリットもあります。例えば、品質管理ついて企業は独自のマニュアルがあり、専門部署もあります。特に製造に携わる社員には、品質管理教育の研修を受けさせる企業もあるでしょう。

また、原料、材料の仕入れ方法や、流通システムを広く知ることができます。他にも、衛生管理、広告宣伝、人材教育、コンプライアンスなど企業ではどのようにしているかを習得することは、食品産業以外の業界でも役立つ知識やスキルになることでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。このように、お菓子メーカーのような企業に就職しても、原価や生産性の数字に縛られたり、製造ラインや配送の制約を考慮した上で菓子を作ることになります。そのため、お菓子づくりがしたい!技術を向上させたい!と思っている方は、お菓子メーカーよりもパティスリーのオーナー店やホテル・レストランの製菓部門の方が向いているでしょう。そして、安易にお菓子メーカーだけに踏み込まず、食品産業を広く理解し企業選びをすると良いでしょう。

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